TITANIUM

About Titanium

原子番号22の元素「チタン」は実用化されて三四半世紀に満たない新しい金属です。
鉱石の中に封じ込められていたのが発見されたことでギリシャ神話における地球最初の子でありオリンポスの神々と争ったことで地底深くに幽閉されたエピソードを持つ巨神ティターンズに擬えて「チタン」と命名されました。
チタンは地球での埋蔵量は豊富ですが発見から精錬されて実用化に至るまでに実に150年もの歳月を要したことからレアメタルの一種とされています。
純チタンは海水中でも腐食しない耐食性と優れた生体親和性、光触媒効果による殺菌作用や低金属アレルギーなどの特性に加えて100%リサイクル可能な金属であることで近年では医療、生活用品、アクセサリー等に普及し日常でも目に触れることが多くなりました。
純チタンは実用化当初は主に化学プラントパーツとして使用されましたが、純チタンに様々な異種金属を混ぜて強度を高めたTi-3Al-2.5V(通称3-2.5チタン)やTi-6Al-4V(通称6-4チタン)に代表されるチタン合金が開発されると高弾性、耐疲労性、鉄の約半分の低比重、共振の抑制特性など優れた機械的性質を持つためエアロスペース産業や車両の軽量化パーツなど高い比強度が求められる分野で普及します。
最新航空機においてチタン合金は総重量の20%以上に使用されています。
しかしチタンは難加工素材の代表と評されるほどに加工と熔接には高い技術と経験が求められます。
溶接は酸素と窒素を完全に遮断した環境でなければ溶接部が劣化し、曲げ加工などの塑性加工においても強力なバネ性を持つため復元力が強く高精度での成形が困難など取り扱いが難しく日常生活物資への普及はまだこれからです。
そのため加工技術の進化に大きな期待が寄せられています。

History of Titanium Frame

チタンフレームは1970年頃より純チタンベースのチューブを使用して英国Speedwell社で製作が始まりました。
しかし高価格であった上に当時の純チタンの抗張力は普通鋼並みで元々チタンのヤング率(たわみにくさの値)が低くいこともあり、当時のフレーム規格ではフレームのたわみが大きく普及には至りませんでした。
1980年代になると米国Elixxir社が3-2.5合金でシームレス管の製造に成功して供給を始めてからは取り扱う工場も増え、加工技術も向上したことで競技や高級車市場で人気となりました。
1990年代になり競技フレームは高剛性化が進み、そのトレンドに対応するためチューブのオーバーサイズ化や変形チューブを使用して剛性を増す試みがされました。しかし剛性を求めた結果、重量が増した上にチタン本来の優れた特徴である制振性や路面追従性が損なわれることが顕在化しました。
その対策としてより高強度な合金チューブ開発が待望されたことで多くの造管メーカーが伝統的な引抜加工技術を用いて6-4チタンの造管に挑戦しましたが その試みの全てが失敗に終わったことで チタンフレームは高剛性化トレンドから取り残され 競技の一線では殆ど見かけることができなくなりました。
しかし、チタンフレームの腐食することを知らない悠久の輝きや視認できる金属造作のクラフトマンシップなどに魅入られる人も多く 現在でも米国においてはハイエンドバイクのアイコンとして君臨しています。