私が開発や製作に携わってきたモデル
KUWAHARA BIKEWORKS (1997~2004)
GOBLIN
元同僚であった宿野輪天堂・岡田浩明氏設計のロングホイールベース+フルサスペンションを取り入れた小径モデル、Gシリーズの初代モデル『GOBLIN』の製作を担当。
リアスイングアームはクロモリ製で日本製作。メインフレームはアルミ製で台湾製作。そして日本で塗装、組立を行った。
自転車用のサスペンションユニットがようやく開発され始められた頃で、部品集めやメインフレームの製作依頼工場探しで苦労した。
『GOBLIN』はシマノが当時ヨーロッパで開催していたデザインコンテストで日本から唯一入賞して大英博物館に展示されるなど海外でも評価が高かったモデル。
GRIFFON
宿野輪天堂 岡田浩明氏設計の小径モデルGシリーズの第2弾、製作を担当。
フレームはフルアルミ製となって台湾で製作。組立は日本で行う。
当時はフレーム加工やパーツ製作にCNCマシンが導入され始めていたので、精度を保つためにフレーム組立後にCNCで加工する手法をとる。
部品構成でMTBスタイルにもできるなどカスタマイズへの汎用性を考えたデザインの先駆けであった。
GAAP
宿野輪天堂 岡田浩明氏設計の小径モデルGシリーズの第3弾、製作監修を担当。
CNCパーツが多用されるため台湾のパシフィックサイクルで完成車として製作して輸入。
GAAPには折り畳み機構やシートアングル調整機構が加えられてカスタマイズへの汎用性が拡張されたこともあり数多くのバージョンが生産され、高額モデルではあったがロングセラーモデルとなった。
DIVER Ver-1 ~ Ver-4.5 Plus
ダウンヒルブームが到来するも当初は高額なUSAブランドが主流。
手が届く価格の本格的ダウンヒルフレームが切望され、日本人ライダーの体格に合わせ開発し、「岩岳カローラ」などと呼ばれたヒット作。
フレーム各部を台湾で製作して組立を日本で行うことで販売時には体重によるスプリングレートや3種のスイングアームの選択を可能とした。
最終バージョンではフローティングディスクシステムや独自のM14スルーアクスルシステムを開発・装備した。
DD BIKES
某MTB選手とD社が「家族でダウンヒル」を掲げて商品化を目指したプロジェクトで開発を担当。
女子のダウンヒルチームまで編成してプロモートを行うも完成車販売価格25万円はハードルが高く、より高性能を求める選手たちとの板挟みで迷走し、ダウンヒルブームの終焉と共に消滅。 コスト削減の為に矩形断面チューブをカットして組み合わせ溶接することでモノコック風にするなど苦労するも力及ばず。
写真は試作した24インチモデル。世界女子マスターズではこれで表彰台に上れたとか。
PURSUE
フラットランドブーム到来の初期にスチールオンリーであったマーケットにあえてフルアルミフレーム&フォークで挑戦、イノベーションを目指したモデル。
インターナルローターやインテグレートフロントペグなどそれまでのセオリーや規格に囚われずに新しいアイデアを取り入れてデザイン。完成車で当時10万円というフラットランドとしては高価格であったが約500台が生産・販売。
SMARTCOG (2005~ )
スマートコグは公共交通機関と共存できるコミューターバイクの開発を目指す
KOMA
StudioStudy 篠塚勉氏原案・設計の6インチホイールフォールディングバイク、製作監修を担当。
製造はパシフィックサイクル。量産までに7機のプロトタイプが製作される難産であった。
第一ロットはシングルスピードだったが、走行性能の改善と当時、極小径車には外装変速機は使用できないとの常識をあえて覆そうということもあり3速外装変速を第二ロットから開発・導入。
生産終了から10年以上が経過しましたが、ご愛用されているユーザーがおられるのでサービスは継続させていただいております。
ANT
設計原案はオーストラリア人、Cyclopediaに試作車は掲載されていたが量産化に失敗してパテントを売却。
購入した会社は大手マスプロメーカーに持ち込むも実用化には程遠く、最後に行きついたのがスマートコグ。
14か所もあるピボットが曲者でしたがダウンヒルバイク開発で培ったノウハウで基本から再設計。
製品化されたモデルは14インチながら脚力がある方なら平地で50㎞/hに到達できる高性能モデル。
ANTも生産終了から10年以上が経過しましたが、ご愛用されているユーザーがおられサービスの継続はさせていただいています。
MINT
折りたたみのアイデアはTaipei International Bicycle Showで最優秀賞を貰うも、実用化には程遠く開発途上で開発に行き詰まり、担当者が競合メーカーに引き抜かれるという状況から開発と生産監修を引き継ぐ。
一般の方への乗り易さに重きを置いたのでご高齢の方にも好評。
折り畳みの簡便さとも相まって公共交通機関との組み合わせでの移動手段としてより高い実用性を持つことを証明したモデルでもあった。
SPEEDCOG (2007~ )
スピードコグはスマートコグのスポーツモデルカテゴリー
HYPERION
コミューターバイクのスマートコグに対してスポーツバイクを扱うのがスピードコグ。
慣性モーメントの恩恵があまり得られない状況下(上り坂・ゴー&ストップが多い街中)での使用を想定した16インチホイールモデル。
プロトタイプは高いポテンシャル(加速力・登坂力)を見せてくれた。
サイズ的にもマンションのエレベーターにそのまま入れられるなどメリットは多く、サイクルモードに展示後は海外からの引き合いも多かったが、当時フォーク(アルミ&カーボン)製作を依頼できるメーカーが見つからず棚上げ。
現在も開発は進められている。
TACURINO COZMA
選手時代の後輩であるタクリーノ上阪卓郎氏とのコラボで生産したモデル。
100%東レのプリプレグを使用。
プロチームのフィードバックに基づき、ヘッドとシートに強化の為ラウンドチューブを挿入・接着した。
単なるモノコック構造とは呼べない手の込んだ造りだった。
グラフィックには「和」をモチーフにしたデザインが取り入れられた。
ユーザーの方にはこのフレームに乗り変えてからレースで優勝されたり好成績を収められた方が多く、未だに「魔法のフレーム」と呼ばれたりしている。
BINARY STAR
ロンドンパラリンピック代表からの依頼で設計・製作したフレームだったが、諸事情でペアの手元に届くまで時間が掛かりテスト走行もままならず本番では採用されなかった。
その後別のペアに乗っていただき1000M T.Tでは日本記録の更新もされた。
桑原商会時代に年500台ほどのタンデム車を米国・欧州に生産輸出していた時の開発ノウハウに基づいて質量の大きなタンデムレース車に求められる高いねじり剛性をもたせたトラス構造デザインを採用。
Consignment of Development & Production
(依頼により開発・製作したモデルのいくつかを紹介します。)
4X Bike
某MTBライダーからの依頼によりBMXコースで行われる4Xレースで勝つために出足の速さや軽量であることに重きをおき設計。
前後重量バランスを考慮しながらホイールベースを詰め、イーストンのフォーミングアルミチューブを採用することでガセットによる補強を不要にしてフレーム重量を1.5kgに収めた。
某MTB雑誌のMTBアワード2006年ハードテール部門のWinnerにも選出された。
U-Cross Bike
没企画ではあったが、個人的には面白かったので紹介します。
前三角3本に直径50mmのアルミチューブを配したデザインのクロスバイク。
依頼者は当時、同様なコンセプトデザインの海外ブランドからヒントを得たように思います。
シート部の外観をスッキリさせるために複雑な内部構造を持つシートポストの固定装置を開発して作動も良好だったのですが、依頼者の事情でプロトタイプの製作のみで開発は中止となった。
WINDCOG ZIC
有名百貨店などの商業スペースデザインを長年手掛けてきたコマーシャルスペースデザイナーであり筋金入りのサイクリストでもある島田智之氏からの依頼で、設計支援と生産を担当。
島田氏の細部まで妥協を許さない拘りがハードルを引き上げ、引き受けてから4年以上に渡る開発期間を経て製品化。
通常フレームの製造公差をはるかに超える設計だったにも関わらず製作を引き受けてくれた工場には感謝するしかありません。
私が手掛けた中でも一二を争うほど製作が困難だった珠玉のモデル。
自転車の生産から遠のいた日本ではこのZICの凄さが理解できる方は少なくなっているのかも・・・
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リアスイングアームはクロモリ製で日本製作。メインフレームはアルミ製で台湾製作。そして日本で塗装、組立を行った。
自転車用のサスペンションユニットがようやく開発され始められた頃で、部品集めやメインフレームの製作依頼工場探しで苦労した。
『GOBLIN』はシマノが当時ヨーロッパで開催していたデザインコンテストで日本から唯一入賞して大英博物館に展示されるなど海外でも評価が高かったモデル。